大学受験問題 解説記事

大学受験問題(数学)についての解説記事

2022年度 静岡大学 理工学部 1⃣

〔目次〕

問題

解答は記述式。

2022年度 静岡大学 理工学部 1⃣ 問題文

解説

問題文に一切図が無いので、まずは問題文を図に落とすところからスタート。



 \angle OCA = \phiとした。

また、中心Oから辺ABにおろした垂線と辺ABとの交点を点Mとした。

△ABCとその外接円

(1)


考え方としては、△OBCが正三角形であることは固定なので、それを土台にして点Aがどこを動くのか考えていけばよい。

問題文をよく読むと大事なヒントが隠されている。



「△ABCを鋭角三角形とし、」



この一言が大事で、つまりどの内角も90度より小さいことを示している。


まず角Bが90度になるときを考えると、 \theta = 30^\circとなる。

そこから点Aを右へ動かしていくと、 \thetaはどんどん小さくなり、やがて角Cが90度になる場合まで動く。

このとき、 \theta = 0^\circとなる。


この範囲で動くことを考えると、

 0 \leq \theta \leq 30^\circ

が答えとなる。

もう少し理論的な解き方をするべきなのかもしれないが、さすがに(1)からそこまで重い証明を求めているわけではないだろう。



(2)

これはさすがに受験生をなめすぎではないか。笑

半径が Rなので、 AM = R\cos\thetaとなる。よって、

 AB = 2R\cos\theta

サービス問題!



(3)

三角形の面積を求める公式は色々あるが、ここでは、辺BCと辺ABの長さ、そしてその間の角Bが全てわかっているので、

 \displaystyle S = \frac{1}{2} AB \cdot BC \cdot \sin\angle ABC

を用いていこう。


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少し補足する点があるなら、△OBCが正三角形だから、辺BCの長さは Rになるということくらいだろうか。

 \displaystyle
\begin{align}
 S &= \frac{1}{2} \cdot 2R\cos\theta \cdot R \cdot \sin \left( \theta + \frac{\pi}{3} \right) \\
&=R^2 \sin \left(\theta + \frac{\pi}{3} \right) \cos\theta
\end{align}


ここまでは数分で答えを出していきたいところ。。


(4)

さあいよいよ本題。

 Sの最大値を求めよということで、つまりこの大問では三角関数の最大最小がうまく扱えますかということを試したかったんだろうね。

こういう時は、強引に微分して求めるか、三角関数の様々な式変形を使ってうまく式をまとめていくか、どちらか。

基本的な攻略法は後者を試してどうしてもうまくいかなかったときに前者の微分を用いることを推奨する。

ということでまずは(3)で求めた Sを式変形していく。

三角関数の式変形で大事なのは、三角関数が1つにまとまることを目標にすると大体うまくいく。

 \displaystyle
\begin{align}
S &= R^2 \sin \left(\theta + \frac{\pi}{3} \right) \cos\theta \\
&= R^2 \left( \frac{1}{2}\sin\theta + \frac{\sqrt{3}}{2}\cos\theta \right) \cos\theta \\
&= \frac{R^2}{2} \left( \sin\theta\cos\theta + \sqrt{3} \cos^2\theta \right) \\
&= \frac{R^2}{2} \left(\frac{1}{2}\sin2\theta + \frac{\sqrt{3}}{2} \left(\cos2\theta + 1 \right) \right) \\
&= \frac{R^2}{4} \left(\sin2\theta + \sqrt{3}\cos2\theta + \sqrt{3} \right) \\
&= \frac{R^2}{4} \left\{2\sin \left(2\theta + \alpha \right) + \sqrt{3} \right\} \left(ただし、\tan\alpha = \sqrt{3} \therefore \alpha=\frac{\pi}{3}  \right)
\end{align}

さて、これで三角関数が1つにまとまった。

使った公式は、 \sin \left(\alpha + \beta  \right)の分解、二倍角の公式、 \sin, \cosの合成である。

どれか1つでもうろ覚えだとこの式変形ができない。

しっかり覚えておこう。



ここまでくればあとは簡単。

(1)より  \displaystyle 0 \leq \theta \leq \frac{\pi}{6}だから、

 \displaystyle \frac{\pi}{3} \leq 2\theta + \frac{\pi}{3} \leq \frac{2\pi}{3}

となり、

 \displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2} \leq \sin \left(2\theta +\ frac{\pi}{3} \right) \leq 1

となる。

よって、 Sの最大値は \sin \left(2\theta +\ frac{\pi}{3} \right) = 1となるときで、

  \displaystyle \max S = \frac{R^2}{4} \left( 2 + \sqrt{3} \right)

となり、このときの \thetaは、

 \displaystyle
\begin{align}
\theta &= \left( \frac{\pi}{2} - \frac{\pi}{3} \right) \times \frac{1}{2} \\
&=\frac{\pi}{12}
\end{align}



感想

(3)まではかなり簡単な問題であったが、差がつくのは当然(4)だろう。

三角関数の公式をしっかり覚えきっていた人にとっては簡単だっただろうが、少しでも曖昧だとこの問題を落とすことになる。

受験数学において基本事項の覚えこみ、叩き込みが以下に大事になるか痛感する問題であった。

2022年度 明治大学 理工学部 〔Ⅱ〕

〔目次〕

問題

解答は記述式で、各文字には数や式が自由に入る。

2022年度 明治大学 理工学部 〔Ⅱ〕



解説

問題文に一切図が無いので、まずは問題文を図に落とすところからスタート。

前半部分をまとめるとこうなる。

図1 

(あ)

図1において、点Pは線分ABと円Oの接点なので、 \angle\mathrm{OPA}=\angle\mathrm{OPB}=90^\circ となる。

つまり、 \bigtriangleup \mathrm{OPA} に注目してあげれば、三角関数  \tan の定義に従って、

 \displaystyle
 \tan \alpha = \frac{1}{t}

(い)

上と同様にして、 \bigtriangleup \mathrm{OPB} に注目してあげれば

 \displaystyle
 \tan \beta = \frac{1}{3-t}

(う)

 \tan加法定理を覚えて入れば楽勝。

 \displaystyle
\begin{align}
\tan(\alpha + \beta) &= \frac{\tan\alpha + \tan\beta}{1-\tan\alpha\tan\beta} \\
&= \frac{ \frac{1}{t} + \frac{1}{3-t}}{1- \frac{1}{t}\frac{1}{3-t}} \\
&= \frac{ (3-t) + t }{t(3-t)- 1} \\
&=\frac{3}{-t^2+3t-1}
\end{align}



juken-kaisetsu.hatenablog.com



(え)

 0 < \alpha + \beta < \pi /2の時、 \tan(\alpha + \beta) > 0となる。

(う)より、 \displaystyle \tan(\alpha+\beta) = \frac{3}{-t^2+3t-1}となるので、右辺の分母を P(t) = -t^2 +3t -1 と置く。

すると、この問題文は、 P(t)が正となるときの tの取り得る値の範囲を求めるただの二次関数の問題となる。

分子は 3で正なので、 P(t) が正なら右辺は正になり、左辺の \tan(\alpha+\beta)も正になるということだ。



 P(t)について考えると、

 \displaystyle
\begin{align}
P(t) &= -t^2 + 3t -1 \\
&= -\left(t - \frac{3}{2} \right)^2 + \frac{5}{4}
\end{align}

だから、これを図示すると、

 P(t) の図示

となる。

よって、 P(t)について横軸( t軸)との交点を見つけてあげればそれが答えとなる。

 \displaystyle
\begin{align}
P(t) &= -t^2 + 3t -1 = 0 \\
\therefore t &= \frac{-3 \pm \sqrt{5}}{2}
\end{align}

以上とグラフをふまえて、

 \displaystyle
\begin{align}
\frac{-3 - \sqrt{5}}{2} < t < \frac{-3 + \sqrt{5}}{2}
\end{align}

が答えとなる。



(お)

問題文も後半になり情報が増えてきたので一度図を描き直すと、以下のようになる。

△ABCとその内接円


ここで、 \angle OCQ = \gamma とした。

さて、ここで \gammaについて考えよう。

なぜか?

 OQの長さは内接円の半径だから 1と分かっている。

それにさきほどまでの(あ)(い)を考えてみよう。

半径が分かっているから、 \tan\gammaがわかれば求めたい CQの長さも求められる。

見通しとしては、 \tan\gammaを求めて、答えが \displaystyle CQ = \frac{1}{\tan\gamma}となる。( \displaystyle \tan\gamma = \frac{QO}{CQ})



[tex: \gammaについて分かっていること、つまり \gamma = \pi - (\alpha + \beta)であることは、、、以下で少しだけ説明しよう。

内接円の性質から、 \angle OAP = \angle OAQ = \alphaとなり、同様に \beta \gammaもその隣の角が同じ値になる。

そうなると、この \triangle ABCの内角について、

 2(\alpha + \beta + \gamma) = \pi

となるから、 \displaystyle \gamma = \frac{\pi}{2} - (\alpha + \beta)となる。



ここまでくれば話は早い。

 \displaystyle
\begin{align}
\tan\gamma &= \tan\{ \frac{\pi}{2}-(\alpha+\beta)\} \\
&= \frac{1}{\tan(\alpha + \beta)} \\
&= \frac{-t^2+3t-1}{3}
\end{align}

よって、

 \displaystyle
\begin{align}
CQ &= \frac{1}{\tan\gamma} \\
&= \frac{3}{-t^2+3t-1}
\end{align}


(か)

三角形の面積の求め方は色々あるが、ここでは内接円が出てきていてその半径も分かっているので、内接円を用いた求積方法を用いる。


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 \displaystyle
\begin{align}
S &= \frac{1}{2}\times1\times(AB + BC+ CA) \\
&= \frac{1}{2} ( AP + BP + CQ ) \times 2 \\
&= AP + BP + CQ \\
&= 3 +  \frac{3}{-t^2+3t-1}
\end{align}

いかにも誘導にのって答えを出していますという感じ。

これで正解に近づけそうだ。

最後の分母部分について値の評価をすれば答えが出せそうで、これは前の設問で考えた P(t)と同じである。

 tの範囲を考えると、

 \displaystyle  0 \leq P(t) \leq \frac{5}{4}

となり、

 \displaystyle  \frac{3}{-t^2+3t-1} \geq \frac{3}{5/4} = \frac{12}{5}

であるから、

 \displaystyle S \geq 3 + \frac{12}{5} = \frac{27}{5}

となる。




感想

今までの伏線を綺麗に回収したような問題構成で解いていて楽しかったですね。

忘れそうな内接円を用いた三角形の公式も出てきたので覚え直しておきましょう!

また次回~

2022年度 明治大学 理工学部 〔Ⅰ〕(2)

〔目次〕

問題

解答はマークシートで、各文字には0~9の数字が該当する。

2022年度 明治大学 理工学部 〔Ⅰ〕(2)



(a) 2つの関数の共有点の個数

数多くの問題を解き、典型パターンは瞬時に解ける読者の皆様なら、以下の手順はすぐに思いつくだろう。


 y = -2x + tと変形して、曲線 Cに代入して、判別式 Dを出す。

判別式 Dについて、0より大きくなるような tの条件を探す。







・・・なぜその手順になるのか説明できるだろうか?


きちんと説明できる人はそう多くないはずだ。



また、仮にこんな手順が思いつかなくても大丈夫。


今から丁寧にこの問題を解説していく。










まず、曲線 Cとは、 x^2 + 2xy + 2y^2 = 5を満たす点 (x, y)の集合だと考えることができる。


また、直線を lとすれば、直線 lは、 2x + y =tを満たす点 (x, y)の集合だと考えることができる。


ここで、その2つの共有点 (x, y)について考えると、その点 (x, y)は、曲線 Cと、直線 lの条件を両方満たす (x, y)であることとなる。


つまり、この2つの式の (x, y)が同じということなので、まずは、直線 lで満たされる関係式 y = -2x + tを曲線 Cに代入してあげるという手順になる。

 \begin{align}
x^2 + 2xy + 2y^2 &= 5 \\
x^2 + 2x(-2x+t) + 2(-2x+t)^2 &= 5 \\
5x^2 - 6t x +(2t^2 - 5) &= 0 \tag{1}
\end{align}


さて、ここで xについての2次方程式になったが、さっきの話に戻れば、この xの値は、曲線 C と直線 lの共有点の x座標の値となるはずである。

つまり、問題文の「共有点をもつとき」という条件は、「式(1)について xが実数解を持つとき」という条件に置き換えることができる。

さて、二次方程式の解の条件をおさらいしたい方はこのリンクを押してみてね。



準備はできたかな?





さて、式(1)について xが実数解を持つためには、判別式 Dを求めて、 D \geq 0であれば良いね。

今回は一次の係数が偶数なので、判別式 D/4を用いて求めていこう。

 \begin{align}
D/4 &= (-3t)^2 -5(2t^2 - 5) \\
&= -t^2 + 25
\end{align}

よって、 D/4 \leq 0となるには、

 \begin{align}
 -t^2 + 25 &\geq 0 \\
t^2 &\leq 25 \\
\therefore -5 \leq &x \leq 5
\end{align}

が答えとなる。



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(b) 2つの関数の共有点

途中までは(a)と同じように考える。

つまり、式(1)で共有点の (x,y)についての関係式を出すところまでは同じ。

 5x^2 - 6t x +(2t^2 - 5) = 0 \tag{1}

これについて、今回は、「 x\geq0 の範囲で少なくとも1個共有点をもつとき」という条件だから、「式(1)で、 x x\geq0 の範囲に実数解をもつとき」という条件に変わる。

さて、これを求めるためには、式(1)のグラフをイメージして、 x軸との交点について考えればよい。

グラフを出すために平方完成すると、

 \displaystyle
f(x) = 5(x - \frac{3}{5}t)^2 + (\frac{1}{5}t^2 - 5) = 0

となり、 \displaystyle x = \frac{3}{5}tを軸とした二次関数になることが分かる。

 f(x)と置いたのは以降の説明のためである。




さて、ここからが少し複雑になる。

まず、交点を1つ以上もつためには(a)で考えた条件が必要で、 -5 \leq x \leq 5 \dots①となる。

ここで、 f(x)の最小値を考えると、平方完成した式から、 \displaystyle min f(x) = \frac{1}{5}t^2 - 5となり、これはその条件で常にマイナスになる。

つまり、軸の部分で yの値は必ず負の値をとることになる。




続いて、軸が正の側にあるときを考えてほしい。

つまり、
 \displaystyle \begin{align}
 \frac{3}{5}t &\leq 0 \\
t &\leq 0
\end{align}
の時。

軸が正の側にあるとき


軸が正の側にあれば、以上のグラフのような概形になり、軸よりも右側で必ず x軸と交点を持つ。

よって、条件は①と合わせて、 0 \leq x \leq 5となる。




次に、軸が負の側にあるときを考えてみる。

つまり、
 \displaystyle \begin{align}
 \frac{3}{5}t &\geq 0 \\
t &\geq 0
\end{align}
の時。

軸が負の側にあるとき

このとき、 x = 0での yの値が負になっていれば、 0 以上でグラフと x軸が交点を持つことが分かる。

これを数式にすれば、

 \displaystyle \begin{align}
f(0) &= 2t^2 - 5 \leq 0 \\
\therefore -\frac{\sqrt{10}}{2} &\leq x \leq \frac{\sqrt{10}}{2}
\end{align}

となり、条件①と合わせて、 \displaystyle -\frac{\sqrt{10}}{2} \leq x \leq 0 となる。




よって、軸が正の場合と負の場合を両方考えれば、

 \displaystyle
 -\frac{\sqrt{10}}{2} \leq x \leq 5

が解答となる。

剰余の定理

 

 


式だから難しく感じてしまう。数字ならこういうことだ。

16を3で割った時のあまりを求める。これは、

 16 = 3 \times 5 + 1

となる。これは、商は5で、あまりは1であることと等しい。

これと上の式(1)を見比べれば、同じことが分かるだろう。

(参考:整式の割り算の余りの求め方|数学|苦手解決Q&A|進研ゼミ高校講座